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建設業に働く若者からのメッセージ

2000年4月1日

建設業に働く若者からのメッセージ(2000年)

21世紀の建設業 ~能動者であれ~ 谷口 光

果たして私は能動者であるのか?と自分に問いかけてみた時、様々な記憶がよみがえった。思い起こせば中学2年の時、自分は料理人になりたいと思っていた。それが何故、今は建設業界にいるかというと、祖父・父と建設業を営んでおり、小さい頃から祖父に連れられて建設現場を見ていた。いずれ家業を継がなければいけないとは、感じていたが、その選択が中学2年という若さで迫られた。

自分にとって非常に難しい選択であった。親の期待やプレッシャーと将来の自分を色々と考えた。そして親父の後を継ごうと決意した。ありふれた選択であるが、自分が建設業の道を選んだもう一つの理由があった。建物や道路の建設と、地域や人に役立つ仕事であり、なおかつ”地球の表面の図式的な表示にカタチとして表示される仕事”であるという所に魅力を感じていた。これが私にとっての建設業の始まりである。

それから、私は理工系の大学を目指し必死に勉強した。高校・大学時代は、休みになれば、アルバイトで建設現場に行くことにした。この何気ないアルバイトの経験が、貴重な経験になるとは、その時は、知る由もなかった。

 

大学はというと、希望どおりとは、いかなかったが、大阪産業大学工学部土木工学科に入学した。大学時代の自分は、大きな吊橋(今の明石海峡大橋のような)に魅力を感じていた。これぞ、男のロマンと思った。

大学を無事に卒業し、大手ゼネコンの?フジタに就職することになった。いよいよ社会人だ。私の最初の配属先は、関東支店の下水のシールド現場であった。新入社員の私も、現場に出れば、一人の監督であった。作業員の皆さんに『監督さん』と呼ばれ、自分も人の役に立てるんだと、少し嬉しかった。

自分の測量や指示で、先が見えない道路の下をモグラのように進んでいく、毎日毎日、同じことの繰り返しであるが、目標点に到達したときの喜び、感激は、言葉に言い表せないものであった。みんなと抱き合い、握手し、良く頑張った、とたたえ合い、これは、実感した者にしか分からないと思う。自分にとって、人生の貴重な経験であった。

 

その後、造成工事、橋梁下部工事と経験した。もう一つ、思いに残る現場があった。それは、西武線の立体交差化工事で練馬区の中村橋にいた時である。ここでは、難しい鉄道の軌道を計算し、測量した。まさに”地球の表面の図式的な表示にカタチとして表示される仕事”である。自分が間違えば、電車が走れない、電車とホームの間のわずか数センチの仕事であった。今でも、東京(嫁の実家)に帰ったときは、息子を、中村橋の駅に連れて行き、お父さんが、この駅を造ったんだよと自慢している。

こうして、何気なく現場をこなしてきたが、今思えば、学生時代のアルバイトが貴重な経験であった。監督の立場だけでなく、作業員の人たちの気持ちも、知らず知らずのうちに考える様になっていた。(株)フジタをやめて、和歌山に帰った今でも、東京時代の仲間が、手紙をくれたりする。嬉しいものだ。

 

3年前に和歌山に帰り、(株)フジタでの経験を生かして頑張っている。規模は小さいが、物を造るという喜びには大小はないと思う。また、この喜びは、一人で出来るものではない、みんなの力であり、チームワークであり・・・これらを大切にしたいと思う。

 

近年、情報技術が進展し、私たちは雑多な情報の奔流の中で、生きている。そして、ともすれば、自らを考えることなく受動的に物事を受け入れるようになってしまっている。知識としては、色々なことを知ることが出来るようになったが、本当の技術力・考える力というのが、少しずつ欠けていっているような気がする。

これからの建設業・21世紀の建設業は、地球環境にやさしい建設といわれている。私たちは、これから、造るだけでなく、壊すことも考えなければならない。都会の超高層ビルを見るたびに思うことがある。果たして、これらの建物は、取り壊すことを考えて建てられたのであろうか。おそらく、取り壊されるのは、今世紀末か、22世紀であろう。

私たちの生活は、日々進化していくが、これに甘んじてはいけない。便利さの中には、必ず落とし穴がある。常に、考える能動者であり続けなければならないと思う。

21世紀の建設業は、受動的な建設業ではなく、能動的な建設業にしていかなければならない。これから、建設業界を支えていく私たちは、変革の能動者・考える能動者であり続けたい・・・。

最後に、これから建設業を目指す人に一言、魅力ある建設業にするのは、あなた次第である。私は、建設業の道を選んでよかったと思っている。人生に目標を立て頑張ってください。

 

※一部の文章に”商標権の侵害のおそれがあり、不正競争行為に該当するおそれがある”との指摘を受けて表現を変更しております。文章内に不適切な言葉を使用していましたことを深くお詫び申し上げます。(2015.11.30)
(補足)”地図”という表現を”地球の表面の図式的な表示”に、”残る”という表現を”カタチとして表示”に変更いたしました。このメッセージ文は2000年に書いたものです。問題の一文が商標登録されたのは2010年1月8日です。決して商標権を侵害しようとして書いたものではないことをご理解願います。

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